ミサト免許とる!
このお話は少し以前の・・・いや大昔のお話です。
大学の食堂、リツコは昼食を一人でとっていた。そこへドタドタと走ってくる者がいた。
「いたいた、リツコ〜〜」
その者はミサト、ニコニコしながらやって来て、胸ポケットからカードを取り出し見せた。
「じゃ〜〜〜〜ん!!免許取ったわよ〜〜〜〜〜ん」
ビシッと目の前に付きつけ笑うが、リツコは目を丸くし唖然とした。
「うそ・・・・これ偽造じゃないでしょうね?」
免許証を手に取りマジマジと見つめるリツコ、その姿にミサトはプウーと頬をふくらます。
「ちょっと失礼しちゃうわね。本物よ」
「最近の偽造は見分けがつかないわね」
「人の話し聞け〜〜〜〜!!」
「赤外線で調べる必要があるわ」
「リ〜ツ〜コ〜」
ミサトの言葉を無視したリツコの独り言に、声がどもる。
「冗談よ、冗談」
笑って免許証を返すが、リツコの目は信用していない。
「さあ、ドライブに行きましょう!」
「えっ?」
突然の事にリツコは驚いた。
「ドライブよドライブ。今日はマイカ〜で来たのよ」
「車買ったの」
「そっ、中古けどね。行くわよ」
ミサトはリツコの腕を掴んで立たせ、サッサと食堂を出ようとするが。
「ちょちょっと待ってよ。午後の講義はどうするのよ?」
「講義なんかより、私とのドライブが重要なのよ」
「・・・・・・・・」
学校に来ている意味が無い。講義を受けたかったリツコだが、ミサトの強引さに負け渋々付き合う事にした。
そして駐車場、二人は車の前に着いた。
「じゃ〜〜〜ん、どう私の愛車は」
目の前にあるのは初心者マークがビッシと貼られた真赤なMINI、スタイルは丸みを帯びて可愛く軽自動車より小さいが普通車であり、生産開始されてから半世紀以上経過するが、人気は衰えていない。
「へえ〜、ミサトにしては良いセンスしているわね」
「何よ、私にしてはって?」
ぷう〜と頬を膨らまして怒るが目の前の愛車を見ると、どうしても頬が歪んでしまう。
「さあ乗って」
「ええ」
さっそく乗りこむ。
「へえ〜マニュアルなの」
「そうよ、やっぱり運転はマニュアルでないとね」
この時代になると車はほとんどがオートマになっていたが、まだマニュアル派がいるのでゴクわずかだが生産されていた。
キーを回しエンジンに命を入れる。
「さあ出発!」
「安全運転でね」
クラッチを踏み、シフトをローに入れアクセルを踏みながら半クラ、だが・・・・・・・
ガコン!
エンスト、エンジンが止る。
「あちゃ〜失敗失敗」
「もっとエンジンを吹かさないとダメよ」
テヘヘと舌を出し、またキーを回す。
「今度こそ」
ガコン!
エンスト、エンジンが止る。
「ありゃりゃ、またやったちゃ」
「あせったらダメよ」
そしてまたキーを回す。
ブロロロロロ〜〜〜〜
今度は失敗をせずに走り出した。
「やったわ、成功!」
「良かったねミサト」
ミサトはやっと発進できた事に喜び、リツコはエンストを回避できた事に喜んだ。
「3回目で発進できるなんて上達したわ。今朝なんて発進するのに50回もかかったのよ」
「そ、そう、だがら今朝いなかったのね」(50回も・・・・・本当に免許取ったのかしら?)
1時間目の講義、二人は同じ教科を受講していたがミサトは出席していなかった。
「そ、ちょ〜〜〜ち遅れちゃったわ」
(もうお昼でしょ。)
ニコニコしながらサラリと言うミサトにリツコは汗が流れた。
その後は何もなく、ドライブは快調であった。
そして・・・・・
一つの信号で止った。
「あちゃ〜しまったわ」
「どうしたの?」
顔に手を当てシマッタとした表情を浮かべる。
「まだ坂道発進なれていないのよ」
「そ、そう・・・・・・」(免許偽造ね)
確信したリツコ。
そうこうしているうちに信号は青に変わった。緊張しながらサイドブレーキを下ろす。
「いくわよ」
だが・・・・・
「あ、あれ?」
「繋がっていないわよ」
スルスルと車はバック。
ドン!
後にいた車にぶつかった。
「あちゃ〜」
「ど、どうするのよミサト」
運転者ミサトはぶつかった事にそれほど驚いていない。むしろ助手席のリツコが驚いていた。当然、後の運転者が下りてくる、その容姿はまさにヤ○ザ。
「ミ、ミサト!」
慌てふためくリツコ、ぶつかった車は真っ黒のベンツ、その色は乗る者を限定させる。
ガンガン!
案の定、ヤ○ザは硝子を叩き大声を張り上げていちゃもんをつける。
「あ、あミサト!」
普段冷静なリツコもこの時ばかりは、汗が体中から流れて頭の中は混乱。
(私達は弁償させられて、法外なお金を取られて払えなくて、あんな事やこんな事させられてピ〜やピ〜や心も体もボロボロにされて、最後には・・・・・・イヤ〜!母さん助けて〜)
頭を抱えるリツコ、ミサトは前髪で瞳が隠れて表情が判らない。
ガン!
ドアにケリを入れるヤ○ザ。
ぷっちん!
其の時、ミサトの何かが切れた。
「こら〜〜!アンタ!私の愛車に何ケリ入れてンのよ!言いたい放題いってくれて、悪いのはそっちじゃないのよ!」
車から下りてヤ○ザの胸倉を掴むと怒号の声、そして初心者マークをビッシと指差した。
「これを見なさいこれを!天下無敵の初心者マークよ!そんな事も判らずに坂道でピッタリつけてるアンタが悪いのよ!」
「・・・・・・・」
リツコは唖然とした。悪いのはこっちの方だが、ミサトは初心者として正当化している。だがヤ○ザも引き下がらない。
「はあ〜?何言ってんのよ。アンタ大体何年運転してんの?こんな事も判らないなんてバカね」
ぷっちん!
今度の音はヤ○ザの方、掴まれた手を払うと拳を作りミサトに殴りかかる。だが・・・・・・
「能無しはお仕置きよ!」
ボカッ!!!!
ミサト怒りのお仕置きパンチ、ヤ○ザは宙で三回転し吹っ飛んだ。
「さあドライブの続きよ」
パンパンと手を払いゴミ化したヤ○ザをフンと一目すると、にこやかに車に乗りこんだ。
「え、ええ」
リツコはこの時思った。『もう二度とミサトの車には乗らない!』と・・・・だが次の日も無理やり誘われ、また次の日も、次の日もと連日授業をサボって無理やり助手席に乗らされた。
そしてどこからし入れてきたのか、色々な技を体験させられた。
(も、もうイヤ〜〜〜〜)
こうしてミサトの運転は現在に至るのであった。
このSSのアイデアはミサトさんが免許取立ての頃の話しをとエレアさんから貰いました。ありがとうございます(^^)
免許取立ての頃の話しで、なぜ現在の無謀な運転をするようになったのか?とリクエストで考えました。
犠牲はリツコさん、ご愁傷様〜(^^;)
こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。
NEON GENESIS: EVANGELION ミサト免許とる!